ちょっとしたこと

「今年の夏は福岡に行くのはやめようね」

 前々から妻とそう話していたのですが、先日、妻の祖母が亡くなったとの知らせを受け、急遽福岡へ帰りました。

毎年恒例だった、妻の故郷である福岡行きを、今年はやめようと話しているのが聞こえたのでしょうか。

まるで、身を以てして

「会いに来て」

と言われたようで、忸怩たる思いでいました。

飛行機は嫌いだから、たいてい新幹線。

長いと思っていた片道5時間。

今となっては、たかだか5時間。

とは言え、3歳の息子には長く退屈すぎる車内。新神戸を過ぎた頃には寝入り、広島で乗客が大勢降りてからは車内はひっそりと静まり返り、昔に比べるとはるかに「静かになった」と言われる新幹線の走る音だけが車内に響く。弔辞を述べることになった妻は、隣の席で涙を流しながら祖母への最後の言葉を考えている。

そこへ、乗務員がやって来て

「お子様へどうぞ」

と、渡してくれたこのシール。

子供が目覚め、このシールを目にして喜ぶ様子を夫婦で思い浮かべて、思わず笑みがこぼれました。

ささやかな心遣い。

ちょっとしたサービス。

もちろん、全ての子供に配っているのでしょうが、こんなわずかなことで人の心は晴れやかななるのだなと実感した出来事でした。

書類や手続きも大事ですが、いやしくも専門家として相続の手続きに携わっている身として、大切な人を亡くされた方への気遣い、心配りといったことの大切さを改めて感じました。

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